自分からできる平和作りの五つ目は「出会い直す」です。「一度の出会いがすべてを決めることがありますが、しかしうまくいかない出会いがあった時、もう一度仕切り直し、出会い直すことをあきらめずにいたいと思うのです。
すでに述べたように、私たちは相手に対する評価を早々に下し、相手を決めつけやすいものです。そして、そのように一度レッテルを貼ってしまうと、なかなか外すこと、貼り直すことができません。しかし一度の出会いで相手を決めつけてしまわず、それがうまくいかない出会いであったり、仲違いに終わった出会いであったり、最初から敵意をむき出しにされた出会いであったとしても、一度撤退し、時間を置き、角度を変えて仕切り直し、出会い直す時、そこで一度貼ったレッテルが剥がされ、違った展開が始まる可能性があるのではないでしょうか」(54頁)。
『平和へのはじめの一歩』では、この文章に続いて川崎桜本のヘイトスピーチの現場で苦しむ在日コリアン三世の崔江以子さんがヘイト団体のリーダーにあてた手紙を紹介しました。「Tさん。私たちの出会いは悲しい出会いでした。Tさん。私たち出会い直しませんか。加害、被害の関係から、今この時を共に生きる一人の人間同士として出会い直しませんか」。
こう書き送る手紙に私自身が圧倒された思いを綴りました。「この出会い方は正しくない。この出会い方では良くない。その時に『では、もうこれっき
り』と言わないで、いったん時間を取り、間を置くことがあったとしても、そして相手にそのつもりがなかったとしても、『もう一度出会い直してみませんか』と呼びかける。・・・そして出会い直しを繰り返していく中で、ある時に変化が起こるということを私たちは経験できるのです」(55~56頁)。このようなしなやかな出会い直しの経験をぜひ重ねていきたいと願います。