自分からできる平和作りの四つ目は「敵意をいなす」です。「相手と真正面からぶつからず、かといって相手を避けるわけでもなく、相手の力をまともに受けずに受け流す。そのような「いなし方」を身につけることは大事なことではないかと思います。
相手から敵意や怒りを向けられたとき、私たちはそれらを避け、拒み、自分を閉じて安全を守ろうとします。あるいは、自分もまた相手に対して敵意と怒りの感情を抱きます。敵意と怒りは連鎖し、互いの間を行き来し、そのうちに増大し、報復に進みやすいものです。しかし、その間を行く道を探り、そこに分け入っていく努力を投げ出してはならないでしょう」(48頁)。
主イエスは言われます。「悪い者に手向かってはいけません。あなたの右の頬を打つ者には左の頬も向けなさい」(マタイ5:39)、「自分の敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい」(5:44)。そうみことばから教えられた私たちは、相手を「愛さなければ、赦さなければ」と思います。しかし自分に敵意を向ける人を赦すのはとても難しい。そこで「赦すか、赦さないか」の選択肢に加えて、「敵意をいなす」という態度を身に着けたいと思います。
自分に敵意を向ける人を真っ向から拒否したり、相手にさらなる敵意を向けたりすれば、互いの間を行き来する敵意は増大する一方でしょう。積極的に相手を受け入れたり、相手を赦したりすることは難しくとも、相手の敵意をいなす術を身に着けたいと願うのです。「愛する者たち、自分で復讐してはいけません。神の怒りにゆだねなさい」(ローマ12:19)とあるように、相手の敵意をいなしつつ程よい距離を保ち続ける。気にせず放っておくゆとり、主に怒りを任せる祈り、怒る相手を客観視する冷静さ。間合いをとって、一つ深呼吸をし、心の中で10数えてみる。そんな工夫を重ねてみてはいかがでしょうか。