平和をつくり出すために「人と人との間でできること」の第五に挙げたいのは、「参加人数を増やす」ということです。 「対立し合う人々だけを狭い空間に押し込めて、その中で並べ替えをするだけでは、その人々だけが孤立し、ますますその関係は閉じた中で難しくなる一方です。そこで五つ目に『参加人数を増やす』ということを挙げたいと思います。
対立している人々と直接に利害や関わりのない人々が対立する人々の中に多く参加することで、対立するベクトルの方向性が拡散し、全体の熱が下がり、敵意や怒り、憎しみの感情が中和されます。当事者からすれば、そのような人々の参加は歓迎できないものであるかもしれませんし、脈絡のない言動や事情を汲まない振る舞いによって混乱させられるかもしれません。しかし、そのような一見無秩序に見える自由さが、深刻な敵対関係の中に新しい風を吹き込むことがあるのです」(74頁)。
こうした複数の他者の介入による緊張の緩和の例として、本の中では「お茶を飲みませんか?」、「ご飯でも食べましょうよ」という「当事者間の閉じた関係を解きほぐしていくような働きかけ」を提案してみました(74-75頁)。もちろん他にも適切な方法、手段があると思いますが、私自身の貧しい経験の中では「一緒に汗を流すこと」が効力を発揮した場面がいくつかありました。若い日に松原湖バイブルキャンプで奉仕中、ある奉仕者同士にトラブルがあって心一つになれなかった時、台風の影響で大嵐になり、奉仕者が総出になって水かきをすることになりました。それまで口もきかずにいた二人を皆が巻き込んで一緒にずぶ濡れになりながら働くうちに、いつしか二人が互いに声を掛け合い、一緒に働いて、やがてそれが和解につながったということがありました。こういうことも適切な助けになると学んだ経験です。