「人と人との間でできること」の第四は「配置を変える」ということです。単純なことでありながら、意外と効果が大きいと実感するものの一つです。  

「ある集団の中で対立が起こったり、反目が生じたりする時、多くの場合はその領域がどんどん狭まり、ゆとりや遊びの空間が失われていきます。狭い満員電車の中に押し込められ、空気の薄まる中で身動きもとれず、そこで鼻と鼻を突き合わせるような距離感で互いに反目し合っているような極限的な状況に陥ってしまうと、そこで和解が生まれる可能性は低くなるでしょう。そんな時に、配置を変えることで、スタックした状況に変化をもたらすきっかけとなることがあるのです。

両者をより広い場所に連れ出して、多くの人々の交わりの中に置き、組み合わせを変えること、並び方を変えること、互いの関係の中に人々が入ることで固くがっちり組み合ってしまっていた両者の関係に緩みが生まれ、ゆとりが生まれ、ほどけ始めることがあるのです。それは当事者同士ではなかなかできないことですが、周囲にいる人々の適度で適切な介入によって可能になるものでしょう」(71-72頁)。  

これは物理的なことでは、机の配置、椅子の並べ方、座り方の工夫といったことであり、また人間関係という点では「敵・味方」のいずれでもない第三者、しかしまったく無関係・無関心でない「誰か」がそこに一緒に居る、中間のポジションに立つということでもあるでしょう。「ある固定してしまった序列や組み合わせがシャッフルされることによって、個人の心の状態や他者との人間関係に変化が生じることがあるでしょう。自分自身のモノの見方、視座、角度なども自覚的に返ることで、見える世界が変わってくることもあります」(73頁)。

こうしてちょっとした工夫で風の通り道が変わる。そんな経験を味わえたらと思います。