「人と人との間でできること」の第二は「想定外を受け入れる」ということです。
「ヒートアップして取っ組み合っている両者の間に割って入るには、こちらにもそれなりの熱量と腕力が必要です。そんな状況を『自分でなんとかしてやろう』と思って腕まくりをし、当事者の熱量以上の熱を発して飛び込んでいった結果、事態が余計に混乱するということも起こりえます。そもそもそのような状況をコントロールすることは難しい。しかしそんな時に、思いがけないところから言葉がやってきたり、人が現れたり、事態が変化するような想定外のことが起こることがあります。このような場面について、NVCトレーナーの方が『想定外を受け入れるオープンさの重要性』ということを教えてくださいました」(66頁)。
「NVC」とは「Nonviolent Communication」の略語で、日本語では「非暴力コミュニケーション」と呼ばれるものです。それは具体的なコミュニケーションの技法を身に着けることを伴うもので、「どのように話をしたり聞いたりすれば、自分たちに本来備わっている力ー人を思いやる力を引き出せるのか、心の底から与えることができるのか、自分自身とそして相手と理解し合えるのかを探る」(35頁)コミュニケーションであり、「人を思いやるコミュニケーション」とも言われます。しかしそれは技法に留まるものでなく、また自分で他者をコントロールするものでもありません。むしろ「意図したり、プログラムしたりできない『想定外』の言葉や振る舞いが、対立と緊張した空気を緩め、熱を冷ましてくれることがある。そこにはある種の『素朴さ』『空気の読めなさ』『突発さ』そして『ユーモアの力』が肯定的かつ効果的に作用する」(67頁)があるのです。
自分では失敗と思える介入が用いられることがある。不思議な用いられ方があるのです。