戦後80年の夏にあわせ『平和へのはじめの一歩 対話と共生の道』という小さな本を出版しました。教会の皆さんもお買い求めくださり感謝します。この本のもとになったのは、2023年5月と今年2月に行った講演、そして2023年6月に国際基督教大学高校で行ったワークショップです。
「平和をつくる者は幸いです。その人たちは神の子どもと呼ばれるからです」(マタイ5:9)と教えられながらも、「平和をつくる」という壮大なテーマを前に、いったいどこから手を付け、何から始めたらよいか見当もつかずに立ち尽くしてしまいそうになる私たちですが、それでもできるかぎりこのテーマも自分の身近なところ、足下から考えて、小さな実践を始めて行きたい。そんな願いを込めて準備しました。
本書の中で強調したのは「対話」の重要性です。神はこの世界を「ことば」をもって創造され、私たちに互いに語り合うための手段として「ことば」を授けてくださいました。しかし人間の高ぶりの罪の結果「ことば」の混乱がもたらされ、私たちは「ことば」を用いていてもわかり合えず、むしろことばで相手を傷つけたるようになってしまいました。そのような私たちの救い主としてこられた「ことば」なるお方がイエス・キリストです。ですから教会は「ことば」を大切にし、丁寧に扱うことを心がけてきました。
しかし人間の罪は平和をいとも簡単に脅かし、崩してしまうものです。罵詈雑言や根拠のない噂、デマや放言によって人々の間に分断が生まれると、その溝を埋めるのは容易なことではありません。それでも「ことば」を用いることをやめず、「対話を続けること」を諦めない姿勢をとり続けることは重要です。特に本書では「非暴力コミュニケーション」から多く教えられたことを盛り込んでみました。次回以降、その一部をご紹介していこうと思います。